つはもの公演感想(編集前備忘録

【公演で印象残ったシーン・台詞など】 すみません、長くなります。印象に残ったシーンと歌は切り離せないのでこの項では一部のことを書こうと思います。 私はトライアルのときから見ているのですが、阿津賀志山の話しでずっと(脚本家さん、まだこの話し書ききれたと思っていないのでは?)と感じていました。パンフレットに源氏と縁を感じるといったことが書かれていたように記憶しているのですが、割と阿津賀志山はオリジナル要素が強く、史実を昇華できていないように感じる部分がありました。阿津賀志山では今剣が乗っ取られた義経に対し「なかまをきずつけるなんて、ぼくのしってるよしつねこうじゃない!」と看破し、敵として切ったシーンがありましたが、『前の主を乗っ取る、何か得体の知れない敵』を絶対悪にすることで、前の主を殺害し歴史を戻す呪縛に正面から向き合わなくて済む、上手い逃げを作ったなと思っていました。しか しこの『得体の知れない敵』は三百年の子守歌以降、登場しなくなりましたよね。(どこへ行ったのでしょう。個人的に三日月ではないと良いと思っているのですが)そこで今回の公演ではどのように今剣が歴史を正すのか、少し不安でもありあり、同時に期待もしていました。(ところで刀ミュ本丸の審神者さん、今剣大好きですね。私も大好きです) いざ本編が始まると今回の「つはもの」は私の期待をはるかに超えた仕上がりで、始終圧倒されっぱなしでした。小狐丸・髭切・膝丸の登場シーンには来歴をなぞる素敵な歌がつき、岩融・今剣の登場には能の橋弁慶を「練習」として演じるという、これ以上ない方法での登場でした。(個人的に阿津賀志山のときの二人の登場シーンで紹介の最後に拍子木の音が聞こえたときからこの能・歌舞伎ベースの演出はひそかに期待していました) 本編の序盤で義経記平家物語の要素を掬い上げ、丁寧に昇華した【散るは火の花】では今剣が琵琶を持ち、バックで巻物がほどける映像が流れ、舞台の最前では源平合戦が繰り広げられる構図に見惚れました。画としてこれ以上ない程美しく、ミュージカルの良さを感じる神がかり的な演出でした。【この花のように】では泰衡の蓮のエピソードを綺麗に救い上げ、三日月がリリックに歌い上げるさまに胸を打たれました。と同時に一輪の蓮の扱い方、動作がとても優雅で美しく(こんなに蓮の似合う刀剣男士がいて良いのだろうか)と思いながら見惚れていました。弁慶が勧進帳を読み上げるシーンでは現代風にアレンジした勧進帳が見られたことに感激しました。現代語で演じられる会話は意味や感情 が掴みやすく、それぞれの思惑や情がとても良く感じられました。舞台の後方で高みから岩融達が見ている構図も良かったです。千年近く続く義経関連作品の系譜にまた一つ名作が加わったな、と見ていて本当に感じました。岩融が今回、「あやつを、今剣を傷つけないでやってほしいのだ」と今剣を思いすぎるあまり必要以上に根回しをしていましたが、このパワーバランスも義経関連の能や歌舞伎で歴史が下るにつれて見られるようになる傾向だったので少し面白く感じました。また、阿津賀志山では落ち着いた、動揺の見られない大人として描かれていた三日月と小狐丸ですが、本作ではそれぞれの葛藤を見ることができ、刀剣男士像の奥行きと、新たな良さが感じられ目から鱗でした。髭切が「あの月、見え ない部分も月なのかな?」と膝丸に問うシーンや、変わった歴史が記憶として流れ込み、自演で三日月の心情を吐露させるシーンには少し厨二病を感じましたが裏を見せない三日月を掘り下げるには良いカタリストとなっていたように思います。(髭切・膝丸自身については今後さらに掘り下げる作品が出てくると確信しているので、期待しています。)さて、阿津賀志山で逃げているように感じられた前の主との対決ですが、今回の作品は『戦う』でも『逃げる』でもない、第三の道『見逃す』が取られたことにとても驚きました。三日月が「本来、歴史には決まった形などない。流れる水のようなものだ」と義経・弁慶の北方逃避説を採用するように「逃げろ」と言ったとき、ボロボロの装束をまとう義経が「こ れまでずっと戦い続けてきたのだ。これからは生きるために逃げて、逃げて、逃げ続けよう」と眼に光をたたえながら言うのには思わず感涙しました。これほどまで真正面から義経達の物語と向き合い、希望を見せてくれた作品は見たことがありません。本当に良い作品を作ってくださってありがとうございました。

【印象に残った歌と、その理由】 二部の方についても少し書かせてください。三日月・小狐丸・岩融・今剣が二年前とは明らかにレベルが段違いに進化していました。衣装についても(私は本職が服飾系なのですが)第一形態のシルエットが統一されていながら丈感とディティールで各キャラの特徴がとてもよく表現されていて、進化したなぁとしみじみ感動しました。ヘアメイクもだいぶアップデートされましたよね。私は今剣推しのせいかウィッグの造りで何の公演か分かる能力が身についてしまったのですが、今回は髪飾りも二度ほどつけ代わっており、わくわくしながら見ていました。メイクは今回の三日月の唇が、ティントでしょうか、ちょっぴりダークでとても好きでした。顔色も今剣のファンデーションがとてもきれいな色味で 素敵でした。(私はヘアメイクや衣装や小物の図録か写真集がいつか出ると信じているのですが、需要ないでしょうか?) 歌の方ですが、【歓喜の華】は盛り上がるバックナンバーでとても好きです。今回、単衣を小道具に使っていたのがけしからん美しさでした。【SA・KA・ZU・KI華兄弟】は前の主たちも出てきて大団円な感じが最高でした。もっとやってください。

【今後登場してほしいのは?】 小烏丸と獅子王を入れて、既存のメンバーでもう一度源平の頃の話しとかしてほしいです。

【感想やメッセージ】 要望になりますが、 ・客席の顔にモザイクを入れてほしい(友達に見せてもらった「あんスタ」でモザイクがきれいに入っていてうらやましく感じました) ・二部衣装の第一~第三形態の全ての衣装でブロマイドがほしい。 ・ヘアメイクや小物の図録・写真集が欲しいです。